LOOK-BACK 2016-2020

参加学生からのメッセージ

01.東條裕也

大学:
明治大学 政治経済学部 経済学科
参加プログラム:
CLMVの持続可能な都市社会を支える共創的教育システムの創造

アジアの経済発展を自分の目で確かめる。

大学1年生時に、東南アジアからの留学生と数多く交流した私は、東南アジアの経済発展を自分の目で確かめたいと思うようになりました。その目的を達成すべく、明治大学政治経済学部促進プログラムのひとつである「2018年度ベトナム短期留学プログラム」に参加し、2018年2月から3月にかけて1カ月間短期留学をしました。前半3週間は、ベトナム経済の中心であるホーチミン、後半1週間はベトナム政治の中心であるハノイに滞在しました。

ベトナムの経済発展を現地で体感。

現地の大学では、「経済」「歴史」「文化」「社会」「国際関係」「ベトナム語」のさまざまな角度から、ベトナムについて学びました。また大学での講義だけでなく、日系企業やJICAの方々からのお話、自由時間で街を散策しているときに目にする膨大なバイクの量や工事現場の数を見て、ベトナムでの経済発展を、身をもって体感しました。大学の講義と自身の体験を合わせながら学ぶことができ、とても充実した1カ月間を過ごすことができました。

ベトナム戦争の後遺症も知る。

その一方で、経済発展の陰に隠れた「ベトナム戦争の歴史」も知りました。大学での講義を聴くなかで、そして街中を散策するなかで、現在のベトナムが、ベトナム戦争と切っても切れない関係であることを痛感しました。街中を歩いていると、障害を持った子供たちを目にすることが何度もあります。彼ら、彼女たちはベトナム戦争における枯葉剤の被害者でした。孤児院であるパゴダやベトナム戦争博物館への視察を通しても、ベトナム戦争の悲惨さをより身近に感じました。現在のベトナムは、目覚ましい経済発展で世界から注目されていますが、その影で今もなお、ベトナム戦争の後遺症に苦しむ人々がいることを知りました。

将来は海外で。

「経済発展を自分の目で確かめてみたい」と思い留学をした私でしたが、結果として経済発展の裏に隠れている「戦争」の存在も学ぶ機会となりました。この経験から、ベトナム以外の国についても文化レベル、人々の生活レベルから知りたいと思い、フィンランドにも長期留学しました。今後は学生としてではなく、各国の文化に寄り添いながら、グローバルなフィールドで活躍する社会人になりたいと考えています。

02.チャン・カン・ヴァン[Ms. TRAN KHANH VAN]

大学:
ハノイ法科大学
参加プログラム:
LL.M.を用いたメコン地域諸国大学との協働によるアジア発グローバル法務人材養成プログラム

越・日・米の法律の比較で、見方が変わる。

私は、ハノイ法科大学で国際法の学位を取得し、法律事務所で5年間勤務した後に法学修士課程に進むことを決め、慶應義塾大学での交流プログラムに参加しました。

授業では国際法を実践的に学びました。各国の法制度の類似点と相違点に注目しながら、それぞれの国の視点で法律を評価したほか、日本と米国の弁護士との交流を通じて、越・日・米の法律の比較を行いました。たとえば、ある契約を別の角度から眺めると、世界情勢が見えてきます。すると、ある契約になぜこのような条項が定められているのか、ほかの国の法律でもこうした条項が必要なのか、という疑問が湧いてきます。訓練を積むことで、法律の見え方が変わってくるのです。また、現場で経験を積んだ弁護士から学べるのは貴重な機会でした。教授陣は一流の方ばかりで、日本の最高裁判事に任命された方もいました。

「時間厳守」は、日本での大きな学び。

住まい探しなどの授業以外の面でも、日本人学生アシスタントがサポートを提供する体制が整っていました。日本で親切にしてもらったこと、東京の公園で教授やクラスメイトたちと一緒に初雪を見たことが、とても印象に残っています。また、日本人は本当に時間に正確で、いつも早めに行動しているということも、留学生活のなかで気づいたことのひとつです。「時間厳守」は、学問以外での最大の学びですね。

学びを活かし、日系銀行に勤める。

大学を卒業したばかりなら、このプログラムは国際法律事務所での仕事に大いに役立つと思います。私のようにある程度の勤務経験があれば、さまざまな分野に取り組むきっかけになるでしょう。私は今、プログラムで学んだことを活かし、三菱UFJ銀行ハノイ支店で働いています。将来は世界の別の場所で、また違った形で活躍しているかもしれません。

03.サイソンパーン ニラミット[Xaysompheng Nilamit]

大学:
ラオス国立大学 日本語学科
参加プログラム:
日本発信力強化に貢献するミャンマー・ラオス・カンボジア知日人材養成プログラム

書道などの日本文化に興味を持ち、参加。

日本に興味を持ったのは、15歳の頃に日本を訪れて書道などの文化にふれたのがきっかけです。書道できれいな字を書くためには、リラックスしていなければなりません。そこが面白いと感じました。ラオス国立大学では日本語を専門に勉強していますが、日本の文化と生活を体験できる機会はとても貴重です。日本語能力検定N2レベルに合格するという目標を達成するためにも、このプログラムに参加しました。

山形弁など「教科書にはない文化」を学ぶ。

日本では、先生や友達と毎日日本語を話すことで、会話能力がかなり向上したと感じます。以前は日本人と話すのは恥ずかしかったのですが、今は自信を持って話せるようになりました。また、日本では書道をはじめ、さまざまな文化にふれることができました。山形県高畠町へのツアーでは、「辨天」という日本酒の工場を見学し、外国への販売戦略についてグループで検討し、プレゼンテーションを行いました。普段は東京で暮らしていましたが、お年寄りが多く夜は静かな高畠町は、自分のふるさとを思い起こさせました。また、「どさいくな(どこ行くの)?」「さすけね(大丈夫)」など、日本語の教科書には載っていない山形弁を学べたことも貴重な経験でした。

目標のN2に合格。日本のマナーも学ぶ

東京外国語大学で優しい先生に教えていただいたこともあり、目標としていたN2にも合格することができました。また、将来日本で働くうえでは、日本のマナーを学べたことも重要でした。友達の紹介でレストランでのアルバイトをしていたのですが、敬語の勉強になったのはもちろん、「ケチャップ」がトマトソースを指すことなど、さまざまなことを学ぶことができました。

日本にはステレオタイプを超えた経験がある。

社会に広く浸透している固定観念やイメージを「ステレオタイプ」と言います。日本に行く前、「日本での生活はきっと苦労するよ。地震や台風もあるし、物価も高い」と先輩に言われましたが、そうしたステレオタイプなイメージ以上に、さまざまな良い経験が待っていました。みなさんも、ぜひ勇気を持って日本に行ってみてください。

04.木村萌

大学:
東京藝術大学大学院 美術研究科絵画専攻技法材料研究室 修士課程
参加プログラム:
日ASEAN芸術文化交流が導く多角的プロモーション ~協働社会実践を通じた心のインフラと質保証フレームの構築~

土地と表現。

私の制作では、土着や風土といった、自分の育ってきた土地の様式を取り入れることを、ひとつのテーマとしています。多量の情報であふれる現代において、土地によって形成された感覚は、作品にリアリティや説得力を与える重要な要素だと考えています。

ベトナムの伝統的な絹絵に取り組む。

2018年、交流事業のための授業でベトナムの絹絵に初めて取り組み、絹の透き通るような見た目や、染めるように描く技法に、日本的な空間感覚に近いものを感じ、興味を持ちました。絹絵は、1930年頃、ハノイのインドシナ美術学校で学ぶグエン・ファン・チャンによって、東洋と西洋を融合した独自の技法として誕生しました。現在では、漆絵と並びベトナムの伝統的な絵画表現として親しまれています。

絹絵が生まれたベトナムの美意識にふれる。

絹絵の歴史は特別長いわけではありませんが、このような表現がベトナムの人々に愛され、続けられてきたのは、それを良いと共感する美意識があったからであり、それは技法の誕生以前から、その場所に住む人々が育んできた感覚が生み出したものだと考えています。実際にベトナムへ行き、その生活や風景にふれながら、絹絵がなぜ今のようなかたちに発展したのか探ること、そして、そのことをきっかけに日本の土地柄を捉え直す機会にするというのが、この渡航でのテーマでした。

現地の友人たちが教えてくれたベトナムの童話には、人が植物や他の生き物へと生まれ変わるものが多く、子供の頃から、身近で豊かな自然と、輪廻転生の考え方にふれてきたことを知りました。

「島」ゆえに生まれた空間感覚。

今回の渡航で、自然や人、美術にふれるなかで一番に感じたのは、変化していくことへの寛容さでした。内と外を枠組みによって制御する必要がないという感覚が、ベトナムらしさであるならば、内と外をつなぐ境界を見出すことが日本の感覚なのかもしれません。 そして渡航を経た今、その空間感覚には島であることが関係しているのではないか、とも考えています。

05.深沼 瑞会

大学:
新潟大学 創生学部
参加プログラム:
メコン諸国と連携した地域協働・ドミトリー型融合教育による理工系人材育成

コロナ禍における
オンライン交流に惹かれて参加。

コロナ禍で海外渡航が制限されている今、メコン地域の学生と交流できる貴重な機会だと考え、オンラインプログラムに参加しました。メコン地域の学生との英語によるコミュニケーションを通じた英語運用能力の向上に魅力を感じたこと、また、新潟県の企業が海外展開するうえで考慮すべきポイントを、企業の方とお話ししながら実践的に学べる点にも関心があり、参加を決めました。

ラオスの学生とともに
オンラインインターンシップに。

このプログラムでは「国による食文化の違いと、食に関わる道具の世界展開について」というテーマで、金網製品などを扱う燕市の企業とオンラインインターンシップを行いました。同じグループのラオスの学生とはオンラインでのメッセージのやりとりやWeb会議を通じて意見交換を行い、新潟大学の学生同士はオンラインと対面の両方での話し合いをし,最後にオンラインでの成果発表を行いました。

異なる文化を持つメコン地域の学生との
意見交換。

今回のプログラムでの最大の学びは、グループワークにおけるコミュニケーションの重要性です。限られた時間のなかで現状を論理的に整理しながら、内容をグループメンバーと共有することに苦労しました。そこで、情報やイメージを共有し、役割分担をしながら活動を進めるように意識しました。異なる文化的背景を持つメコン地域の学生の意見を引き出し、自分の意見を可能な限りわかりやすく伝えるよう努めたことで成長につながったと感じています。今回のプログラムで学んだグループワークにおけるコミュニケーション能力を活用し、将来は、日本の企業と海外の地域を円滑につなげていけるよう貢献できる人材になりたいと考えています。

メコン地域の学生や企業との
交流で学びを深める。

このプログラムでは、実践的に英語運用能力を高めることができます。メコン地域の学生と、同じ課題に向かってグループとして取り組むことで見えてくる地域の特性も学べます。また、メコン地域の学生だけでなく、インターンシップを通じて企業の方と交流する機会もあるので、その企業や企業を取り巻く環境への理解を深めることができます。少しでも興味がある方は、語学力の程度に関わらず参加をお勧めします。

06.小島 未莉

大学:
名古屋大学 経済学部経済学科
参加プログラム:
ASEANと日本を繋ぐ「グローバル・ソフトインフラ基礎人材」育成プログラム

NUSの学生との交流に魅力を感じて参加。

子供の頃にカナダに5年間在住していたのですが、当時から文化や意見の異なるさまざまな国の人との交流に楽しさを感じていました。そのため、留学や海外での就職にも強い興味があり、海外経験を積むために本プログラムに参加しました。アジアトップレベルの大学であるシンガポール国立大学(以下、NUS)の優秀な学生との交流も、とても貴重な機会になると考えました。

NUSの授業に刺激。
シンガポールでの市場調査も。

本プログラムでは、2018年度の受入・派遣、2019年度の受入の計3回参加しました。2018年度の受入では、学内でグループワークやディスカッションを行ったほか、トヨタ、ブラザーなど東海地方の製造業を中心に見学を行いました。派遣では、NUSの授業に参加しました。インタラクティブかつ双方向な授業形態に新鮮さを感じました。また、日本の飲料メーカーの協力のもと市場調査も行いました。自販機の設置状況について日本とは異なるシンガポールの傾向を調査するため、ショッピング街やオフィス街を歩き回ったのは良い思い出です。

異なる国の人の意見を
引き出すリーダーシップ。

最も印象深いのは、2019年の受入時に行った自動車部品メーカーへのグループ提案です。この取組では、グループワーク経験の豊富なNUSの学生がグイグイと進めていき、私はほとんど貢献できずに終わってしまいました。ショックを受けて落ち込んでいると、ベトナム人留学生が次のように励ましてくれました。「日本人はみんなの意見をしっかり聞いて話をまとめることができる。それもまたリーダーシップだと思う」。NUSの学生の引っ張っていくリーダーシップや説得力あるパブリックスピーキングは非常に良い影響を受けました。ただ私は、もともといろんな国の異なる意見を持ったメンバーとの交流に魅力を感じていたので、参加者全員が自らのリーダーシップを発揮しながら合意形成できるようなグループワークを大切にしたいと考えています。

本プログラムに参加して、海外と関わり、国際的に活躍できるような人材になりたいという思いは、より一層強くなったと感じます。

07.服部 紘司

大学:
京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻
参加プログラム:
気候変動下でのレジリエントな社会発展を担う国際インフラ人材育成プログラム

災害対策等に関する
オンライングループワークを実施。

京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻M1の服部です。ちょっと背伸びして違った世界を見てみたいと思っていたところ、前期のガイダンスでRSDCプログラムを知りました。自分などが参加していいものか不安でしたが、勇気を出して参加を希望しました。

今年度のRSDCプログラムは、8月上旬の約1週間にわたりオンラインで行われました。前半はCOVID-19下での災害対策についてのグループワーク、後半では国土強靭化のための各分野(水資源、洪水、土砂災害、地震)について講義とそれを踏まえたグループワークが行われました。ちなみに、事前準備としてプログラムが始まる前に各グループで自己紹介プレゼンをする日があったり、日本人学生向けの英会話レッスンがあったりと、手厚いサポートがあり難なくプログラムの日を迎えられました。

不慣れな英語でやりとげたグループリーダー。

RSDCのプログラムの多くは普段の大学の授業とは違いグループワークがメインでした。日本語ですら自分の考えをうまく相手に伝えるのが苦手な私は、英語でのグループワークに苦悩しました。それに加え、グループリーダーにたまたま指名されてしまい、焦りました。しかしながら、幸いにも優秀なグループメンバーが支えてくれて、ときに苦しみながらも楽しく円滑にグループワークができました。メンバーには感謝の限りです。

アジア各国の学生の積極性・主導力を実感。

プログラムを通じて印象的だったのは、アジア各国の学生の積極性・主導力です。参加する前からなんとなくイメージは持っていましたが、実際に目の当たりにするとなかなか圧倒されるものでした。確固とした自分の考えを持ち、多くの人を前に自信を持って主張する姿は素直にうらやましいと感じました。自分は性格的に真似するのは難しいし、真似したらいいというものでもないと思いますが、グローバルな舞台に立つときに必要なことを深く考えさせられました。

敷居が低いのは、オンラインの利点。

今年度はオンラインでの開催ということで、やはり対面の方が体験として充実していたとは思いますが、参加する敷居が低かったのはオンラインの利点だと思います。グローバルな環境に乗り出すのには勇気がいるけれど、まずはオンラインで参加できるのであれば、いい経験になるのではと思います。

08.正出 七瀬

大学:
広島大学 教育学部 第二類(科学文化教育系)社会系コース
参加プログラム:
CLMV諸国の持続可能な平和、幸福、発展に貢献する研究力と社会起業力の融合人財育成

カンボジア、
広島それぞれの視点から平和を語る。

今回のプログラムに申し込んだきっかけは、2年前、広島大学のプログラムで約1週間カンボジアを訪れたことです。その際、最も印象的だったのは、教育の社会的意義を強く感じさせる国であるということです。

知識人層の虐殺という歴史が今日の教育課題にまで尾を引いているという事実は、教育の大局的な側面の重要性を表しているように感じました。今回も平和が大きなテーマでしたが、プログラムの中心が、互いのプレゼンテーションだったことで、「さまざまなクメール・ルージュの『敵』」や「当時の人々の日々の生活(飢餓)」など、カンボジアの学生の語りを通じた、より社会史的な視点で学ぶことができました。加えて、クメール・ルージュによる被害を中心とした発表を行ったカンボジアの学生に対し、戦後史や平和教育、観光など現代的・今日的なテーマを選択した日本(広島)側、というテーマ選びの違いも興味深かったです。

英語を用いたオンラインでの
対話に感じた難しさ。

活動を行うなかで、王立プノンペン大学の学生はもちろん、院生や普段から英語で授業を受けている学部生ばかりであった広島大学からも英語が堪能な参加者が多かったように思います。また、オンラインという対面に比べ非言語情報が少なく、雰囲気がわかりにくい環境ということもあり、日常的に英語を使う機会の少ない私にとっては困難さを感じることもありましたが、それも含めてこの度の学びであると考えています。

再びカンボジアを訪れる日を心待ちに。

このような時勢にも関わらず、海外の学生と学ぶ機会をいただけたことはとてもありがたいです。一方で、だからこそ、実際に現地を訪れたり、対面で会話したりすることの価値を痛感したのも事実です。私たちがカンボジアという国や現地の人々から得られる示唆はたくさんあるように思います。私の専攻する社会科教育に限っても、カンボジアの歴史記述や語り、平和教育、教育制度上の課題など、必ずしも同質ではないからこそ示唆的であり、まだまだ知りたい、これから深めていきたいと思う学びがたくさんありました。再び現地を訪れることができる日が、ますます待ち遠しいです。