国際連携でゲノム医学のエリートを育てる
京都大学ジャパンゲートウェイプログラム(JGP)医学生命分野では、ジョイント・ディグリープログラム専攻として、2018年4月に「京都大学・マギル大学ゲノム医学国際連携専攻(博士課程)」を開設しました。専攻長の松田文彦・大学院医学研究科附属ゲノム医学センター長にお話を伺いました。
2大学の強み生かす
この専攻では、日本とカナダ、2つの大学が連携して、ゲノム解析で世界をリードする研究者を育てます。1学年4人という少数精鋭のエリート教育です。
マギル大学は、日本のどこよりも充実したゲノム解析のプラットフォームを持っています。一方、京大は血中の代謝物やタンパク質など中間形質の分子情報を網羅的に探る「オミックス」分野で、マギル大学より一歩先を進んでいます。
学生は両大学を行き来して学び、研究することで、双方の強みを利用できます。両大学で1人ずつ指導教員が付いて、学生が研究等を進めるためのサポートを十分に受けられる体制になっています。財政的な支援もあり、僕が学生だったら絶対に入りたいですよ。
本物のゲノムサイエンティストを目指せ
既成のプログラムを走らせて既知のパターンのデータを解析し、それなりの数値結果を出せる「バイオインフォマティシャン」は、たくさんいます。しかし、求められているのは、深い生物学的な洞察を組み合わせ、どんなデータをどう解析すれば新しい知見を引き出せるかを見通し、ゲノム解析を使いこなす本物のサイエンティストです。
期待する学生の一例は、若い医師です。医学の知識をもとに、自分の研究テーマと検体と情報を持ってきて、この専攻で研究して学位を取る、というのが一つのモデルです。将来、大きな臨床試験をオーガナイズして解析する能力を得て、そして次世代の研究者も育成できる人になってほしい。
もちろん募集は医師に限っているわけではありません。このほか、数学や統計学、機械学習や人工知能などの分野で力を持つ人も活躍できるでしょう。 1年目の学生4人をみると、日本の2人は医師、マギルから入学した1人は化学、もう1人は薬学を勉強してきた学生です。4人中3人は女性でした。チャレンジ精神のある女性の応募が多いことには、喜ばしい驚きを感じています。4人の今後に大いに期待を寄せています。
世界の最前線を体験してきて欲しい
医学研究科の一般の博士課程より、厳しい面はあります。英語の能力も求められます。入学してから1年半から2年の間に、学位研究にふさわしい学力や知識が備わったかが査定されます。それに合格して、晴れて学位研究ができる。そして分厚い博士論文を英語で仕上げ、何時間もの欧米式公聴会をパスしなければなりません。
また相手側の大学に最短でも1年は滞在することを求めています。その間に、最先端の研究が海外でどのように進められているのかを体感し、将来の同僚やライバルになる同世代の学生たちとも知り合いになってきて欲しい。大学院生のうちに世界の動きを直に知ることができるのも、この専攻の魅力です。
(平成31年 1月)